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概要

kaigaikenshu_43

必要最小限の限られた人(貧困層など)に必要最小限の額を給付する社会」というような内容である。私にとって、今回の合同研修は生まれて初めての渡米であった。当初は、先にもあげたエスピン-アンデルセンの福祉国家レジーム論などから、アメリカの福祉サービスは厳しい競争社会において提供されるため、裕福な家庭は別として一般的にはすさんで乏しいサービスではなかろうかという予測をしていた。しかし、4月6日から10日までの5日間にわたるサンフランシスコでの合同研修で幼児期から高齢期までの様々な福祉現場を見学するうちに、私の抱いていたアメリカの福祉のイメージは変わった。アメリカは州ごとに福祉サービスも異なるため、私たちが見学したカリフォルニア州は比較的財政が豊かであるということも影響していただろうが、例えば、自分の生活を送るための十分な収入を稼ぐことが困難な状況の障がい者の場合には、年金が支給され、生涯にわたって人生の各ステージに必要な支援が受けられるように保障されていた。また、見学先の一つであったEdgewood、Gregory Sterchiは、様々な理由で家庭ではなく福祉施設で生活しなければならない子どもたちの生活の場であったが、そこは手入れの生き届いた広い敷地内に体育館やカウンセリングルーム、プライバシーの保障された個室が準備されており、子どもたちの発達保障がなされるに十分な環境であった。印象的だったのは、見学させていただいたどの施設においても、職員の説明の中に「主張すること」の重要性が必ずと言ってよいほどあげられていた点である。さまざまなバックグラウンドの人たちによって構成される多民族社会の中では、きちんと自分の立場を主張しないと存在が無視されてしまい、サービス支給のために必要な資金は声の大きい人たちのところに流れていってしまうようである。私たちは、日本では似たようなバックグラウンドの人たちが多く集まって構成している社会の中で福祉サービス提供の仕事をしているためか「主張」することの重要性はあまり考えない。むしろ、如何に周囲と協調していくかを考えながら働く場合が多い。そのため「主張」と聞くと、怒鳴りたてるような強い印象を受ける。しかし、アメリカの現場の職員と話してみると、彼らの言うところの主張とは「PR」や「アピール」に近い内容であることが次第にわかってきた。自分たちの活動やニーズを社会にPRしていくためには、日頃からどのように説明すれば相手に理解してもらえるかを様々な角度から考えて頭の引き出しの中に準備しておかねばできないことである。アメリカの福祉サービスでは、サービスを提供する側も利用する側も、そのことを常に念頭に置いている様子には驚きを覚えた。?15?