ブックタイトルkaigaikenshu_44
- ページ
- 69/82
このページは kaigaikenshu_44 の電子ブックに掲載されている69ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。
このページは kaigaikenshu_44 の電子ブックに掲載されている69ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。
kaigaikenshu_44
真が飾られていた。それらの写真を部屋の真ん中の椅子に座って30分ほど眺めていた。この写真の人達は何を語りかけているのだろう?と、想像しながら。写真に写っている人達の表情は黙っていて目だけが何かを訴えるかのようにこちら側を見ている気がした。この時代から35年ほど経つが、この表情は今でも精神科病院でよく見る表情で、精神薬で沈静されて表情が少し硬い。病院改革で精神医療は大きく進化して変わったけども、根底の(人を人として見る)部分は、今でも課題があり、あまり変わっていないと強く感じた。物悲しい気分のまま、公園内を散歩した。回収されずに残っている建物トリエステ精神保健局管理部昔の活動を写した写真3.Maddalena di Salute Mentale(マッダレーナ精神保健局)マッダレーナ地区は低所得の人達が多く暮らしており、貧困などの様々な社会的問題を抱えている地域である。バスを乗り継いで行ってみると市内のカジュアルな風景から、どんどん人通りがなくなり、古い建物とアスファルトが続く殺風景な眺めに変わっていった。何人かに道を尋ねてようやくマッダレーナ精神保健局にたどり着いた。中に入るとデイケアの食堂・ホールの様な場所に10人ほどの人がいてお喋りをしている。利用している人達は、60代後半から70代位の歳に見受けられ、パーキンソン症状(精神薬の副作用で体が硬直すること)のような特徴的な歩き方をしている人もいた。しばらくホールの椅子に座り、五感でいろいろと感じた。帰り際、ソーシャルワーカーらしき人と目があったが、忙しそうに早足で廊下を歩き去っていった。ここでも何か刺激的なエネルギーが感じ取れるかを期待したが、そうとはならなかった。この3か所を視察して思った事であるが、トリエステは精神病院を解体し、精神の障害がある人でも地域においてその人らしく暮らしている、と勝手に思い込んでいたという事であった。現実は、改革の後も地域での生活を支える為に、たゆまない努力をし続けている。問題が無いのではなく、いろいろな社会的問題はあっても、その問題に向かって市民と精神保健福祉に携わる人達が、一体となって取り組んでいることである。そのことがいかに大切なことであるか、ガイドも居なくて迷走した感はあるが、研修ツアーでは味わえない経験ができた。?65?