ブックタイトルkaigaikensyu45
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? 15 ?【デンマークでの合同研修を終えて】Ⅰ.社会福祉法人 将道会 南東北相談支援センター 主任介護支援専門員 社会福祉士 佐藤 真希子 デンマークについては、一般的に知られている「世界で有数の幸せな国」「福祉国家」というぼんやりとした知識しか持ち合わせず、具体的にどのような福祉施策が行われているのか分からないままデンマークを訪れた。 中央競馬馬主社会福祉財団のデンマークにおけるコーディネーターであるMomoyo 先生が手配してくださった様々な障がい分野の7ヶ所の住宅(日本の施設とは意味合いが違う)の訪問見学やボランティア団体の活動説明、Momoyo 先生や千葉忠夫先生のデンマークについて講義を受ける中で、なぜデンマークが社会福祉国家と言われ、国民が生活に満足しているのかを理解することができた。 私が一番痛切に感じた日本の福祉との大きな違いは「利用者中心主義」の理念と実践である。もちろん日本でも大きく叫ばれている理念ではあるが、デンマークでは確実に徹底し実践されている。デンマークの福祉は、利用者一人一人がそれぞれ有する力を発揮し、夢を実現するために各専門職は存在するという考えを一貫して実践しているのである。利用者個人の有する能力を専門的に事細かに評価し、個別化された介護計画を立てそれを実践し、また再評価をする。質の高いケアを提供するよう、どの組織にも専門性が高い職員が多く存在しその専門性を活かしている。職員が専門知識を得たいと感じれば、教育に対しても組織だけではなく国家も支援するので、職員の質も意欲も向上し、さらに良いケアが利用者に提供できるのである。デンマークの住居施設設備といったハード面が素晴らしいのは承知のとおりであるが、ソフト面である職員の質の向上にも組織が努力を惜しまないため、良いケアが利用者に提供できるといった良い循環が構築されるのである。訪問した全組織がとても和やかで開放的で心地良い雰囲気と感じるのは私だけではないだろう。 また日本の福祉との大きな違いとして、国家が、住民一人一人の人生を「点」ではなく「線」で継続的に支えていることが挙げられる。デンマークはコミューンが中心となり、住民の「ゆりかごから墓場まで」といった福祉を実践している。コミューンは住民全体の状況を把握しており、住民が生まれた時から最期の時まで、教育や医療、福祉が必要となったときには責任を持って専門職を動員し判定し、必要な教育や医療、福祉へ結びつけている。住民は健康な時期には多額の税金を国に納める義務を果たし、国家の福祉施策を支えるといった「共助」を実際に行っている。そのため住民はどのような時期でも、住み慣れた地域で安心して暮らし続けられるという確信があるのである。この国民の「安心感」が「幸せ感」へつながるのだと思う。デンマーク国家がコミューンといった小さい単位で国を分け、コミューン内で完結できる福祉体制を作り上げた取り組みは、日本が目指す地域包括ケア構築のヒントになり得るのではないだろうか。 私にとってこの合同研修は、デンマークの社会福祉制度を学ぶだけではなく、国民が安心して生活を送ることができている社会全体の雰囲気を体感することができ、その後デンマークで個人研修をする上で基礎となる知識を得ることができた貴重な機会となった。