ブックタイトルkaigaikensyu45
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? 16 ?Ⅱ.社会福祉法人 恩賜財団済生会支部 北海道済生会西小樽病院みどりの里 作業療法士 小玉 武志 デンマークに到着すると、多くの自然に溢れていることを体感する。奇しくもそこは私の故郷である北海道に似ており、風が肌寒いところまで一緒であった。空港からノーフュンスホイスコーレまで送迎をしていただき、デンマークの街並みを車窓から眺めながら宿泊地に到着する。いよいよ研修の始まりである。 今回コーディネートをしてくださったのは、Momoyo T. Jorgensen 先生で、半日ごと、2 回の講義と、実に8 つの異なる施設の見学を可能にしてくださった。私たちが見学できた施設は、障がい児幼稚園、特別支援学校、成人脳障がい者住居施設、重度障がい者住居施設、高齢者リハセンター、認知症高齢者住居施設、地域健康センター、そして看取りの会のボランティアサークルの7 施設1団体である。まさにデンマークの代名詞である「ゆりかごから墓場まで」を文字通り回ることができた。ボランティアサークルを除くすべての施設が税金によって運営されている。ボランティアサークルも、利用には費用はかからないものの、登録しているメンバーの交通費などは自治体から捻出されている。さすがは社会福祉国家と言わざるを得ない。施設は自治体(Commun と呼ぶのが一般的)が運営するものと、州が運営するものに分かれているが、病院としての機能が強い場合は州による運営がなされている。今回見学した施設の中では、成人脳障がい者住居施設が州による運営であった。これらの施設を利用するには、判定を受ける必要があり、その結果必要に応じたサービスの一つとして提供されている。もちろん自己決定が優先されるこの国では、本人の意思によってサービスを選ぶことができる。しかし、利用にかかる負担はなく、その個人に必要な介護用品や装具類など、生活に必要なもののすべてが無料で受けられる。日本と比較すると、社会福祉制度の大きな違いに感銘を受けると同時に、施設運営の仕方も徹底されているのが印象的だった。これらの施設は税金で運営されているため、職員がより専門的なことを学ぶための機会が確保されていたり、一人一人の職員が理念に基づき利用している個人に合わせた関わりが徹底されていたりと、福祉職の専門性の高さを感じることができた。また、ペタゴーと呼ばれる生活全般を支援する専門職種が確立されており、日本にはない職種の役割に非常に興味が湧いた。他にも医療ができる介護士がいることにも驚いた。筋肉注射までが許されている介護士がいることは日本では考えられないだろう。公務員である(給料が確約されている)にもかかわらず、高い専門性を維持するためのモチベーションも高く、自己研鑽を怠らないデンマーク人の国民性に触れることができた。また、職員配置は、個人の対応の困難さの度合いによって変わることも素晴らしい。「障がいは病気ではない」という思想のもと、生活を支えるために必要な人数が勤務している。それは非常に自由度の高い勤務であることがあった。多くの違いを感じるとともに、公務員によって全て成り立っていることの素晴らしさとともに、これだけの施設を税金で維持することの大変さは想像をはるかに超える。福祉とは何か、日本はなぜ福祉が進まないのか、少しだけヒントを得ることができたような気がした。