ブックタイトルkaigaikensyu45
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kaigaikensyu45
? 48 ?Ⅰ はじめに 漠然と「海外について知りたい」と思っていた私が、こうして海外研修生として貴重な機会を得ることができたことは何よりの幸せであった。日本の重症心身障害の分野で働く私にとっては、重症心身障害児・者施設は日本独自の福祉サービスであることを十分に知らされていたが、何が違うかを本当の意味で理解していなかった。ある学会で「日本の重度な障害児・者に対するサービスは世界に類を見ないものである」と言われた時、単純に『日本のような施設のない環境で、世界の重度な障害児・者はどのように生活しているのだろう?』という疑問しかなかった。元々海外志向の強かった私の興味は、福祉にフォーカスされていった。決定的であったのは、大学院在籍時代、講義の中でカナダの医療福祉について学ぶことがあり、そこでも「カナダの医療費や教育費は基本タダである」と聞かされ、驚きを隠せなかった。日本は国民皆保険制度があり、医療支援が充実していると感じていた私にとっては、医療費がタダ、教育費がタダ、といった世界の福祉事情は日本の遥かに上にあるように感じてならなかった。だからこそ、日本では医師や看護師、医療スタッフに囲まれて生活している重度の障害児・者を、世界ではどのように支援しているのかを知りたかった。そして、今まさに日本での障害者福祉の課題が地域への移行であるからこそ、障害の程度に関わらず、地域で暮らすための制度や支援がどのように展開されているかを学びたいと思った。 また、発達障害の分野で作業療法士として働く私にとっては、リハビリテーションという医療を提供する立場であるため、教育と福祉の領域にいる発達障害の子ども達に対して「教育の分野で作業療法を展開することができれば、もっと支援の幅が広がるのではないか」という思いがあった。作業療法士の働く分野として、小学校などが3 割を占めている海外に対して、日本は1 割にも満たない。日本における作業療法士の活躍の場は狭く、多くは医療の分野でしかないことを知っていたため、世界の教育分野にいる作業療法士の役割を知り、日々の実践に役立てることができるのではないかと感じていた。特に北海道における現状としては、特別支援学校に作業療法士が関わっていることは少ない。個々人や学校単位では連携が取られていることはあっても、制度として特別支援学校に通う全ての子どもに作業療法が提供されていることはなく、家族が医療機関を受診することによって初めて作業療法を受けることができる。障害を持つことで必要な支援が多い障害児に対して、専門職種が関わることができない福祉制度には疑問を感じずにはいられなかった。 日々の臨床的な視点から湧き出てきた2 つのテーマに対して、世界における福祉サービスを学び、そこで得た知識や経験を元に、重度な障害児・者に対する支援と、発達障害児に対する教育連携を実践したいと考えた。個々の関わりを通して、世界各国における福祉の充実さや満足度についても利点と欠点を踏まえ、日本の現状に見合った支援の形を模索したい。