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概要

kaigaikensyu46

? 97 ?Ⅰ はじめに平成25 年12 月、「和食」がユネスコ無形文化遺産に登録された。「旨味」という概念が存在し、だしの使い方によって味に深みが増す。四季折々の食材を活かして調理するだけでなく、見た目の美しさにもとことんこだわる。手間暇かけないと作り上げることができない、品があって奥深い食文化だ。日本食は日本人の誇りである、そう思っている。さて、そんな素晴らしい日本食のおかげか長寿国だといわれる我が国であるが、健康寿命はいかがなものか。私が所属している特別養護老人ホームにおいても経管栄養の受け入れは増加傾向にある。「口から食べる」人間本来の姿を目指し経口移行支援に取り組むも、改善されるケースは極めて少ない。同時に、在宅や施設で最期を迎えたいというニーズも増えてきており、思うように食事を摂ることができない方への対応も求められている。少しでも食べていただけるよう支援できるのがベストであるが、誤嚥等のリスクは避けられない。管理栄養士として求められる専門性が高くなってきていると感じている。また、地域包括ケアシステムの構築が国全体で推進されており、当施設も地域との関わりを重んじているが、食分野での介入はあまりできていない現状があるように思う。施設入所時点でやわらかい食事を食べているという情報であっても、入所後、思いの外普通の食事が食べられるというのはよくあるケースだ。知識不足によって食事形態や食欲低下が引き起こされることもある。施設入所者へのサポートはもちろんであるが、在宅で生活されている高齢者への介入が重要であると感じさせられる日々であった。そんな折、海外研修応募の話が舞い込んできた。元々諸外国の食文化に興味はあったが、さらに高齢者への食事支援をどのように行っているのか知りたいと思うようになった。ターミナルケアにおける食のサポートをどのように行っているのか。個々の意思が尊重される諸外国での実態を学べば、何か改善策が得られるのではないか。また、地域包括ケアシステムが構築されている先進国では、地域高齢者と食を通じてどのような関わりを持っているのか。在宅で暮らす高齢者への介入事例を学ぶことで、地域社会の一員として、食分野におけるアプローチの幅を広げ、生き生きと暮らす高齢者を増やしたいと思った。そこで私は、福祉施設における管理栄養士の役割と現状を知ること、地域高齢者の食事分野での介入方法を学ぶこと、ターミナルケアにおいての食事支援方法と重要視する点について学ぶことを目的として、海外研修へと臨んだ。