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概要

kaigaikensyu46

? 86 ?スウェーデンもデンマークと同様に福祉国家である。しかし、福祉施設の民営委託が始まり、人件費の削減などの経営意識に傾きつつある。デンマークとスウェーデンのそれぞれの国で働く職員の話を聞くとその意識の差が感じられた。しかし、どちらの国も日本と比較するとその意識の差は比べられないほど高かった。ケアの内容やしていることは日本とそれほど変わらない。違うのは国民の福祉に対する価値観である。もう一つ北欧で感じたことがある。それは全てにおいて合理的であるということだ。政治面でいえば、デンマークやスウェーデンでは高額の税金を国民から徴収している。国民は高い税金を支払うことを理解しているどころか、税金を納めることに誇りを持っている。そして国民から徴収した税金の使い道が透明化されており、国民はその使い道を納得している。日本では、税金の使い道が不透明なため、たった2%の消費増税でも国民の意見は賛否両論に分かれる。また、福祉システムや業務内容に全く無駄がない。全てはそこを利用する利用者を中心と考えているため、それ以外の無駄な仕事がない。日本はどうか、経営のため、監査のためなど、することが多く、福祉現場では毎日毎日走り回っているのが現状だ。一方、北欧を出て、アメリカのサンフランシスコに渡った。北欧とアメリカでは天と地の差があった。アメリカは国民皆保険がない唯一の先進国である。簡単に医療を受けることが出来ない。家族が病気になったことがきっかけで、家族全員がホームレスになるケースもある。実際に街を歩いてみると3 ブロック歩けば、2 ~ 3 人のホームレスに出会う。本当に自己責任の国であると感じた。サンフランシスコの高齢者施設をいくつか訪問したが、そこを利用している方々やそこで働く職員は自分が生活するために、必死になっていることが感じられた。次にカナダを訪れたが、カナダのシステムは日本とよく似ていた。訪問した施設は日系ホームで国営だったため、本当に充実したケアが行われていたが、民営のナーシングホームもたくさんあり、日本のような慌ただしいケアが行われているという。4 ヶ国を訪問中、海外の福祉の実態を直接肌で感じ、自身の研修テーマである“人材教育”という分野をどうするか毎日考えた。そして辿り着いた結果は以下のとおりである。名付けて“Coffee Time for Education(以下CTE という)”である。とにかく日本はすることが多い。毎日走り回る職員、慌ただしくなる電話の音、職員同士の慌ただしい大きな掛け声、タテ組織、意味があるのかどうか分からない会議や勉強会、数々の実態調査やデータなど、言い出せば無限に出てくるのではないかと感じる。その中には、もちろん大切な業務もあり、日本で福祉の仕事をしていく中で全て必要なことかもしれない。しかし、私が気づいたことは、日本はすることが多く“人と人とのコミュニケーションの場が欠落しているのではないか?”という部分だ。海外研修に行く前は、“「考える」ということが欠けてきている”と思っていたがそうではなかった。毎日の仕事の中で、職員同士がどのくらいコミュニケーションをとっているか考えた。少なく